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「隠れ谷」
一昨年の盆、昼間に容赦ない放射熱を放った太陽が 大宇陀の山稜に身を沈め、地に長く影を伸ばす頃、私 は体に残る午後の猛暑を癒すため、クーラーで冷え切 った車を南へと走らせていた。 あては、無い。
ここ、宇陀郡榛原町には私の母の 郷里があり、田舎好きの私はいわ ばそのオコボレにあずかっている。 あずかるだけだから、いつも居る わけにはいかない。まれに母が 帰郷するのを狙って、ご同行さ せてもらっている。そんな訳だ から、未踏の箇所はまだ十分 に残っていた。 加えて、探検するには、大和は十分すぎるほど秘めた過去を持っているといえる。
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