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「隠れ谷」
飛んで火に入る夏の虫のような気持ちで、私は光を想った。  さっきから私の林道に沿って、一本の電線が、一縷(いちる) の光芒のように頭上を流れている。あれがある限り、私は まだ人界にいるに違いない。 電線が、その先の人家を保証してくれていた。  道はと言えば、華奢な林道が、断崖を迂回している。 迂回が終わるとすぐに次の峰が眼前に迫り、あわれ な林道は慌てふためいて再度迂回していた。
方角がようやくあやしくなってきた時、 にわかに明るい所へ出た。 樹間から茅葺きの農家が見える。 安堵していい。
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