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「隠れ谷」
結局、夕闇にせっつかれるようにして麓まで逃げ下ったが、 驚きが醒めず、土間でうつうつとその事ばかり考えた。
かの地は落ち人の隠れ里に違いない。  当初は奈良県に多い平氏落人のねぐらかと考えたりしたが、 そうではないと思うようになった。  伊賀衆諸党いずれかの隠し谷ではないか。
 思い当たる点がある。  村は幾度も稜線を迂回した奥に あるために、もしこの谷で盛大に 煙を炊いたとしても、麓の人の視 界には入るまい。試みに額井岳に 登ったが、いくら目をこらしても それらしい村は見当たらなかった。
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